2024年秋号 国外源泉所得非課税制度運用に関する追加ガイダンス(香港)


BDO Asia - ジャパンデスクニュースレター 2024年秋号

 

内国歳入局(IRD)は、ウェブサイト(https://www.ird.gov.hk/eng/faq/fsie.htm)にて国外源泉所得非課税(FSIE)制度に関する追加ガイダンスを設例形式で表しました。

FSIE税制は、2023年1月1日以降に香港で受領する特定の国外源泉所得に適用され、非課税扱いの要件を満たさない場合、受領した時点で課税対象となります。

今回追加された設例のいくつかを解説します。


設例9:未送金のFSIE所得の追跡

香港へ未送金のFSIE所得を使用して、香港域外にある動産・不動産を取得した場合、その後当該不動産が売却された際の所得は元の未送金のFSIE所得としてみなされます。
これは何度再投資を行っても同様であり、IRDはこのような再投資活動から生じる損益によって、当初のFSIE所得は変更されるべきでないとしています。
その後、資産の取得や売却から生じる利益や損失がFSIE税制の下で課税対象となるかどうかは、当該資産の売却に関する事実と状況を考慮して個別に検討されることとなります。


設例25:FSIE税制施行日前の取引に関する所得発生・受領が施行日以降となった場合の取り扱い

2022年に株式持分の売却による国外源泉譲渡益を得たが、契約により納税者は2023年に売却対象法人の業績に対し偶発的な追加報酬を受け取ることとなった事例において、(a) この偶発所得が課税対象となるか、(b) 課税可能性に関する経済的実体を判断する基準期間はいつなのかをIRDが示しました。
IRDによると、(a) 当該偶発所得は、FSIE税制施行以降に受領することとなるため、FSIE税制の対象となり、 (b)経済的実体の基準期間はIROセクション15K(2)に明示されている通り、当該所得が発生した2023年となります。


設例26:経済的実体が期中に縮小した場合の取り扱い

期首に負債と一定の株式持分を保有していた会社(事業年度:12月31日末)が期中にすべての負債を処分したため、その後は株式持分のみを保有し、期中に国外源泉配当を受領しました。23/24会計年度中に受領したすべての配当収益について、経済的実体の縮小に伴い、純粋持株会社
とみなされ、経済的実体要件の軽減が適用できるかどうかという事例について、IRDは、 IROセクション15K(2)において経済的実体の判断について異なる条件を規定しており、この事例の場合、期中にすべての負債が処分されたとしても、当該会計年度において純粋持株会社とはみなされず、従って経済的実体要件の軽減は適用されないと明示しました。


設例28:間接投資所在地における、直接投資持分譲渡益に係る課税の取り扱い

納税者の直接投資持分を譲渡する際、これが保有する間接投資先が所在するY国で課された税金が、直接投資持分譲渡に関して負担した税金とみなされることで、 FSIE税制の下で資本参加免税が適用できるかどうかという設例です。
IRDによると、当該直接投資持分譲渡益が、Y国において間接譲渡に係る事業所得税の課税対象となり、Y国の基準税率が15%を超えている場合、資本参加免税が適用されるとしています。


設例29:株式投資の譲渡が関係する国外で非課税扱いとなる場合

株式投資持分の譲渡について、いかなる外国税も支払われていない場合、そのような譲渡益はFSIE税制の下で資本参加免税の課税対象条件を満たしていないとしています。
これは、当該国がそのような投資に対する参加免除制度を運用することで、株式投資が所在する国でのみ譲渡益が課税されない場合も含まれます。

 
BDO 香港 吉田 薫 KaoriYoshida@bdo.com.hk