2024年秋号 個人所得税について(タイ)
2024年秋号 個人所得税について(タイ)
BDO Asia - ジャパンデスク ニュースレター 2024年秋号
新たにBDOタイオフィスに赴任となりました土屋と申します。本号より今後のニュースレターにおいて、タイのトピックも投稿予定です。本ニュースレターでは、タイの一般的な所得税の税制について解説いたします。
1.居住者判定
暦年中にタイに滞在した日数の累計が180日以上であった場合には、タイの税法上、居住者とみなされます。そのため、日泰租税条約における短期滞在者免税においても、「暦年の累計滞在日数が180日を超えないこと」と規定されており、他の租税条約で規定されている183日ではないことから留意が必要となっています。
タイの所得税の標準税率は、5%から35%となっており、日本と同様に累進課税制度が導入されております。一方で、住民税はありません。また、日本と異なり原則所得区分はなく、一定の配当及びキャピタルゲイン(タイ上場会社から生じたキャピタルゲイン等)を除き、上記の標準税率で課税が行われます。
タイ税法上の居住者については、国内源泉所得及び国外源泉所得のうちタイ国内に持ち込まれた所得との合計が所得税の課税対象とされます。国内源泉所得とは、①タイ国内における職位・職務から得た所得➁タイ国内の事業所又は事業からの所得③タイ国内に所在する資産からの所得とタイの所得税法上規定されています。国外源泉所得については、2023年12月以前は当該所得が稼得された同一年度にタイに持ち込まれた所得のみ課税対象となっていました。しかし、直近の税制改正に伴って、2024年1月1日以後にタイに持ち込んだ国外源泉所得については、当該所得の稼得時期に関わらず、タイにて課税されることとなります。なお、当該改正に伴って二重課税が生じた場合には、外国税額控除の適用が可能となっています。また、経過措置として、2024年以前に国外源泉所得を稼得し、その所得を2024年1月1日以後にタイ国内に持ち込んだ場合には、当該改正の対象外となっています。
タイ税法上、一定の金額を課税所得から控除することが認められています。
- 経費控除(一定の所得の50%又は100,000バーツ)
- 基礎控除(60,000バーツ)
- 配偶者控除(60,000バーツ)
- 扶養控除(30,000バーツ~60,000バーツ/扶養人数)
- 社会保険料控除
- その他生命保険・プロビデントファンド控除等
5.申告・納税
3月31日が確定申告書の提出及び納税期限となっています。一方で電子申告で行う場合には、当該期限の8日後が提出及び納税期限となっています。
6.税務調査の時効
原則は、2年又5年(租税回避が疑われる場合等)とされている一方で、民商法上は時効が10年となっています。当該税務調査において、過少申告等が発覚した場合には、最大で未納付税額の100%(無申告の場合には最大で未納付額の200%)及び延滞税(月1.5%)が課されることとなっています。
不納付加算税及び延滞税は、日本と比して多額であることから、不明点等は適時税務専門家に相談の上、申告及び納税を行うことが望ましいと考えられます。